第110話 ストーリーモード17 鶯谷園で語る夏の半導体乱高下、そして獅王がまさかの…!?

*【この作品はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。】

九月も半ばを過ぎた夜、鶯谷駅から歩いてすぐの老舗焼肉店「鶯谷園」。1968年創業という年季の入った看板の下で、史郎と刹那が獅王と落ち合っていた。

獅王「おお、来たか二人とも!ここの特上ヒレは絶対食わなあかんで。溶けるような柔らかさや。」

史郎「獅王、相変わらず食に関しては即行動だな……あ、それと今日はもう一人来るんだったよな?」

刹那「そうそう!凛は少し遅れるって連絡来てた。私と一緒に会社を立ち上げたビジネスパートナーであり大親友なんだ〜。獅王さんとは初対面だよね?」

獅王「せやな。刹那ちゃんと一緒に会社やっとる子か。楽しみやわ〜。ほな待ってる間に、腹ごしらえしながら最近の相場でも振り返ろか。ここ最近、ほんまにジェットコースターやったからな。」

店員がタンとロースを運んでくる。網の上でジュウジュウと音を立てる肉を見ながら、獅王がビールを一口。

7/28 62,364円…半導体関連の急落が主導、いわゆる『つるはし銘柄』の反動安。

8/19 ▲1,856円…AI投資の過熱感に対する警戒売り。

9/2 ▲1,455円…続落。米長期金利の動向を睨んで様子見ムード強まる。

9/8 ▲1,095円…3日続落。半導体株は底堅さも見せつつ全体は上値重い。

9/14 AI開発減速ショック

9/16 FOMC、25bpの利上げ(3.75〜4%)。2023年以来の利上げ

史郎「7月末には6万2千円台まで一気に調整…。8月、9月とまた荒れたよな。俺なんかもう完全に振り落とされそうだったよ。」

刹那「うんうん、私も9月頭の▲1,455円は久しぶりに肝が冷えたな〜。でも半導体株自体はそこまで崩れてない感じもするんだよね?」

獅王「ええとこ突くやん、刹那ちゃん。そこがポイントやねん。今回の下げは半導体『企業の業績』が悪化したわけやない。むしろメモリー価格は爆騰しとる。問題は『織り込みすぎた期待』の方や。これは俺の妄想やけど、アドバンテストや東京エレクトロンが日経平均をぐいぐい押し上げてきた反動でちょっとでも米国のAI投資計画に減速の兆しが出るたびに、みんな一斉に利確に走っとるんやろな。」

史郎「なるほど…業績相場から期待相場に変わってた反動、ってことか。」

史郎が苦笑いしながらタンをひっくり返す。

史郎「毎回思うけど、獅王の『妄想』はなんだかんだで筋通ってるんだよな……。」

刹那「ふふ、獅王さんの妄想は名物だもんね。あ、来た来た!凛、こっちこっち!」

店の入り口から、少し息を切らした様子で女性が駆け寄ってくる。刹那のビジネスパートナー兼親友、凛だ。

凛「刹那ごめんなぁ、遅なってもうて。…史郎さん、お久しぶりです!」

史郎「凛ちゃん、久しぶり。お疲れ様。」

刹那「凛、こちらが獅王さん。私たちがいつもお世話になってる投資仲間の先輩でね。」

そう紹介された瞬間、獅王の箸がピタリと止まった。

(なんやこの子…可愛すぎる。。やばすぎるて!!こんな子今まで見たことないで…。)

獅王がそう思うのも無理はない。凛は持って生まれた天真爛漫さ&美貌の持ち主であり、街を歩けば不特定多数が振り向くレベルなのである。

網の上の肉が焦げ始めているのにも気づかず、獅王は凛の顔から目が離せなくなっていた。

獅王「あ、あの……どどどどうも。れれ、獅王(れお)です……いや、天王寺獅王、言います……れ、レオって呼んでもろても、いや呼ばれても、知らんけど……。」

刹那と史郎が同時にピタリと動きを止め、目を見合わせた。

刹那(小声で)「獅王さん、今噛みまくってなかった?」

史郎(小声で)「いつもあんなに滑らかに関西弁で喋る人間が、こんなになるの初めて見たわ。」

凛はというと、まったく気づいていない様子でにこやかに頭を下げる。

凛「はじめまして、橘凛です。刹那と一緒に会社やってて、いつも助けてもろてます。獅王さん、投資の話めっちゃ詳しいって刹那から聞いてますわ!」

獅王「い、いや、そんな大したことは……あ、焼けてる!肉焼けてる!ちょ、ちょっと待ってな!」

慌てて網の上の肉をひっくり返そうとして、トングを落とす獅王。史郎がすかさず拾って渡してあげる。

史郎「獅王、大丈夫か?いつもの調子はどこ行ったんだよ。」

獅王「ななな、なんのことや。ただ肉が焦げそうやっただけや。ただそれだけの話やで、うん。」

刹那が凛にこっそり耳打ちする。

刹那「ねえ凛、獅王さん独身なんだよね。」

凛「あ、そうなん!ウチも独身やで〜。奇遇やなぁ!」

まったく意図に気づかず明るく答える凛に、刹那は思わず天を仰いだ。史郎も肩を震わせて笑いをこらえている。

獅王は取り繕うように、いつもより一段高い声で話題を相場に戻した。

獅王「そ、そうや!凛さんも投資してんの?さっきの続きやけど、9月相場、正直まだ荒れると思うで。けどな、この乱高下の裏には案外シンプルな構図があってな。AIバブル警戒論とAI本格普及論の綱引きが、毎週入れ替わり立ち替わり材料になっとるだけなんや。中期的には半導体はまだ強いと俺は見とる。せやから押し目は拾い場やと思うで…な、凛さんもそう思わへん?」

凛「え、あ、はい!なるほどなぁ、勉強になりますわ〜。獅王さんって、やっぱりめっちゃ投資に詳しいんですね!」

無邪気に微笑む凛に、獅王の顔がみるみる赤くなる。

さらに裏を明かすとな…

  1. FRB(やや利上げ)と日銀(利上げ絶賛継続中)の思惑。円安に乗って買ってた海外のゴリゴリ投機筋が「金利差縮まるやんけ!」って慌てて撤退したんや。
  2. AIデータセンターの電気食いすぎ問題!
    電力消費がヤバすぎてエネルギー高騰を恐れた年金勢が、ひっそり手仕舞いしとる。裏では半導体商社と電力会社がバチバチに縄張り争いしとる。

(あくまで参考意見や、投資は自己判断で……って、今それどころちゃうねん!)

心の中でそう叫びながらも、口ではひたすら相場の話を続ける獅王。刹那と史郎は、もはや笑いをこらえるのに必死だった。

刹那「(小声で)史郎さん、これ絶対あれ(一目惚れ)だよね…。」

史郎「(小声で)ああ、間違いない。獅王があんな顔するの、長年の付き合いで初めて見たよ。」

四人はビールと焼肉を囲みながら、相場の話と獅王の空回りが交互に続く、賑やかな夜を過ごした。凛はまだ何も気づかぬまま上機嫌で特上ヒレを頬張っている。

果たして獅王の想いの行方は…今後の展開やいかに⁈

ストーリーモード18に続く

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