
アナリストの三浦です。芦田が本日お休みのため、私が代理で対応させていただきます。今日は数字だけ見ると「往って来い」の一日ですが、中身を丁寧に切り分けるとテクニカル的にはかなり示唆の多い一日でした。半導体主力どころの調整幅も含めて整理します。
- 日経平均:寄り高からの全戻し、しかも安値引け
高値66,791円から大引けまでの下落幅は約1,522円(-2.3%)。しかも安値=終値。前日終値(66,399.84円)を挟んで一日中上下に振らされた末に、結局マイナスで着地した形です。

ここで確認しておきたいのが「原因の切り分け」です。 後場のドル円は12時の152.89円(安値)から15時時点で153.31円とほぼ横ばいで「下げ渋り」でした。つまり、後場の株安を単純に「円高が進んだから」と説明するのは正確ではありません。円は午前中に急伸した水準でほぼ止まっており、後場の下げは為替とは別の力学―朝方のSBG・半導体主導の戻り高値からの利益確定売り、そしてテクニカル悪化に伴う機械的な追随売り―と見るのが妥当です。原因を一つに決めつけず、「為替要因」と「需給・テクニカル要因」を分けて考える癖をつけておくと、次に似たような値動きが起きたときに慌てずに済みます。
2. 世界の株式市場
• 米国:7日はレイバーデーで休場、材料難のスタート。
• アジア:韓国KOSPI・上海総合は堅調、香港ハンセンはやや軟調。半導体比率の高いKOSPIが底堅かったことが、前場の戻りを支えた一因。
• 前日(7日)の流れ:SBG・アドテスト・東エレクの3銘柄で日経平均を1,000円超押し上げる大幅高(+1,378円)。その反動も今日の重荷に。
3. 為替:主役は「152円台」到達、ただし後場は小康状態
• 7日夕(欧州時間):154円台へ急伸、「155円の壁」(4〜5月・7月の日米協調介入時に守られた水準)を突破
• 8日朝:154円台前半でスタートし、じりじり下値模索
• 8日正午前:152.88円まで下落(2月17日以来、約半年ぶりの円高水準)
• 8日15時:153.31円で下げ渋り、方向感が乏しい展開に
介入警戒の思惑と日銀の利上げ加速観測、それに伴う円売りポジションの巻き戻しが円高の主因。片山財務相は「具体的な水準への言及は差し控える」としつつ「秩序ある為替相場の維持に取り組む」とコメントしています。

4. 需給・テクニカル
• RSI(中期):13 — 売られ過ぎの目安とされる30を大きく割り込み、極端な過熱売りゾーン
• MACD:-193、シグナル:-39 — マイナス圏でヒストグラムが拡大、下降モメンタム継続を示唆
• ボリンジャーバンド:終値65,269円は-1σ(65,898円)を明確に下抜け、-2σ(65,506円)にも接近する水準まで悪化
• 終値65,269.33円は、8月19日の急落安値(65,326.42円)をわずかに下回る水準
ここで一点、数字だけを見て早合点しないでほしいのが、RSIの過熱感です。「売られ過ぎ=即買い」ではありません。オシレーターが過熱を示していても、そこからさらに下に走る相場はいくらでもあります。まず確認すべきは8月19日安値(65,326円)を明確に回復できるかどうか。ここを終値で上に抜け返せなければ、直近の押し目の目安が下方修正されたと考えるべきです。
5. 半導体主力どころ、実は「高値からの調整」がかなり進んでいる
ここが今日一番お伝えしたいポイントです。日経平均自体は年初来高値(6月22日の72,831円)から見てまだ約10%の調整に留まっていますが、指数を牽引してきた個別の半導体関連は、銘柄ごとの年初来高値からの下落率がすでにかなり大きくなっています。

※イビデン・レゾナックの直近株価は本稿執筆時点で確認できた最新の公開データであり、9月8日終値そのものではない点はご留意ください。ただ、「年初来高値からすでに3〜4割規模の調整が入っている」という構造は変わっていないはずです。
つまり、指数だけを見ていると「今日は1.7%安、意外と軽傷」に見えますが、その内側にある値がさの半導体・AI関連は、個別に見ればすでに数ヶ月がかりの大きな調整局面に入っている、という二重構造になっています。指数の値動きと、指数を主導してきた個別銘柄の値動きは、必ず分けて見る必要があります。
6. 「日経6万円超え」時代のボラティリティについて
補足として一つ。今日のように日経平均が1,000円を超えて動くと、見出しだけ見ると「暴落」のように感じるかもしれませんが、これは水準の問題でもあります。日経平均が25,000円前後だった数年前は、1%の値動きが約250〜300円でした。今の66,000円台では、同じ1%の値動きが約660円になります。今日の-1,130円という下げ幅は率にすると-1.70%で、過去の「25,000円時代」に換算すればおよそ-425円程度の下げに相当します。
「円建ての下げ幅」だけを見て過度に警戒する必要はありません。 大事なのは率(%)とチャート形状(安値引けかどうか、主要な移動平均線やサポートラインを割ったかどうか)です。今日は率で見ても十分に大きい下げではありますが、「6万円を超えたことで、これくらいの円建てボラティリティは平常運転になった」という感覚は持っておいてください。
7. 日経新聞での気になるトピックス
• ソフトバンクGの出資先オープンAIが3日、新型AIモデルの一部企業向け提供を開始と発表。SBG株の材料になったが、材料出尽くし的な利益確定も引き出した格好
• 円相場が「155円の壁」を突破し152円台まで進行。4〜5月・7月末の日米協調介入時にも割れなかった水準を超えたことで、円安基調の転換を巡る市場関係者の見方が分かれている
• 日銀の次回決定会合は9月17〜18日、直前の米FOMCは9月15〜16日。パウエル氏からウォーシュ氏への議長交代後初のFOMCとなる点も要注目
• 片山財務相:「対応方針は日米協調介入時から一切変わらず」「秩序ある為替相場の維持に取り組む」と為替介入を排除しない姿勢を改めて示唆
まとめ
今日の教訓は二つです。一つは、円が後場に落ち着いていたにもかかわらず株が売られ続けたという事実そのものが、需給・心理面の弱さを示すサインだということ。もう一つは、指数の見た目の下げ幅(1.7%)と、指数を支えてきた半導体関連個別銘柄の実際の調整幅(高値比3〜4割)はまったく別物だということです。RSIは売られ過ぎ水準まで来ていますが、8月19日安値(65,326円)を終値で回復できるかどうかを最初の判断材料にしてください。FOMC・日銀会合を控え、ここからはポジションを軽めにしつつ、「率」で相場を測る視点を忘れないようにしましょう。
それではまた次回のカブケンMarket Memoでお会いしましょう。
第102話に続く
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