
皆さんこんにちは。カブケン所長の芦田薫です。今週も一週間の値動きと需給、来週の注目材料を振り返っていきます。初めて読む方にも分かるように、専門用語には簡単な補足もつけていきますね。
先週の振り返り―主役はやっぱり雇用統計
週前半(8/31〜9/3)は、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会、米国の金融政策を決める会合)での利上げ観測とボラティリティの高まりを嫌気し、日経平均は4営業日続落。31日には日経平均VI(通称「恐怖指数」、将来の値動きの荒さへの警戒度を示す指数)が前日比19.7%増の27.83まで急伸し、市場の警戒感の強さを表しました。
流れが変わったのは週末9/4(金)。FRBウォラー理事がインフレ鈍化の兆しに言及するハト派的な発言をしたことで米長期金利が低下、前日の米ハイテク株高を追い風に東京市場も5営業日ぶりに反発しました。日経平均は前日比806円高(+1.26%)の65,020円で終え、週の下げ幅をほぼ埋め戻す格好です。
ただし中身には注意が必要です。この日はソフトバンクグループとアドバンテストの2銘柄だけで上昇幅の8割超を作る「一部の値がさAI株への資金集中」相場で、東証プライムの値上がり・値下がり銘柄数はほぼ半々。TOPIXはわずか+0.03%にとどまり、指数の見た目ほど市場全体が強かったわけではありません。
そして週の最大のヤマ場は、9/4夜(日本時間9/5未明)に発表された8月の米雇用統計です。非農業部門雇用者数は+16.2万人と、市場予想(+5.3万人)を3倍以上上回る大幅な上振れ。6月・7月分も上方修正され、労働市場の底堅さが改めて確認されました。
これを受けてFOMCでの利上げ観測が一段と強まり(フェドウォッチの利上げ確率は前日の49%から58%に上昇)、NYダウは反落。一方でドル高・円安(一時1ドル156円70銭台)が進んだことで、シカゴ日経平均先物はむしろ上昇するという「NY安・東京高」のねじれが生じました。地合いを一言でまとめると、「良い経済指標=株安」というインフレ再燃警戒の相場に変わりつつある、ということです。
個別銘柄ピックアップ
• ソフトバンクグループ:傘下Armの株価上昇を受けて大幅高。個人投資家向けとしては最大規模となる1兆円の社債発行条件も決定、利回り4.75%は同社として2009年以来の高水準でした。
• アドバンテスト・キオクシア:AI半導体関連への物色が続きました。キオクシアは1日の売買代金が1.65兆円に達する集中ぶり。
• イビデン・太陽誘電:同じくAI・半導体関連の一角として買われました。カブケン運用部でもウォッチ中の銘柄です。
• トヨタ・商社株(三菱商事・三井物産・伊藤忠):金利低下を受けて反落。
需給の視点
空売り比率は9/1時点で41.8%と、過去平均とほぼ同水準。極端な弱気ポジションが積み上がっているわけではありません。日経VIは月末の警戒感で急伸しましたが、値がさ株主導の反発もあり週後半にかけて過熱感はやや後退した形です。ただし、雇用統計後に金利が再上昇していることを踏まえると、来週にかけて再びVIが上昇するリスクは意識しておきたいところです。
上場来高値銘柄にみるテーマ
先週は仕手的な値動きの銘柄を除いても、上場来高値(会社設立後の最高値)を更新する銘柄がいくつか出てきました。テーマ性がはっきりしているので、来週以降のセクター選びの参考にしてください。
日本郵政・ふくおかフィナンシャルグループなど銀行・金融関連:9/4には日本郵政やふくおかFGを含む12銘柄が上場来高値を更新。米雇用統計を受けた金利上昇観測で、長期金利(10年国債利回り)が上昇したことが追い風になりました。銀行や郵政グループのような金融株は、金利が上がるほど運用収益や貸出金利ざやの改善が期待されるため、「金利上昇メリット株」として買われやすい構図です。


一時的な思惑買いというより「金利上昇局面」という今のテーマに素直に沿った動きである点がポイントです。

今週(9/7週)の注目イベント
• 9/7(月):米国はレーバーデーで休場。国内は7月の景気動向指数が発表されますが、薄商いになりやすい点に注意。
• 9/8(火):4〜6月期GDP改定値、7月毎月勤労統計、7月国際収支が発表。
• 週内:8月の米CPI(消費者物価指数)発表を予定。9月中旬のFOMCを前にした最後の重要インフレ指標です。
• 9/11(金):メジャーSQ(先物・オプションの主要な決済日)算出日。需給が短期的に歪みやすいタイミングです。
今週の戦略
強い雇用統計を受けた利上げ観測というシナリオが続くなら、金利に敏感な不動産株やグロース株には逆風、円安の恩恵を受けやすい輸出関連・値がさ半導体株には追い風という「まだら模様」の相場が続きやすいでしょう。今週発表される米CPIの結果次第で、この構図が一段と強まるのか、それとも落ち着きを取り戻すのかが試されます。メジャーSQ通過までは短期筋の需給に振らされやすい点も、頭の片隅に置いておいてください。
それでは、また来週のMarket Memoでお会いしましょう。
第100話に続く
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