【号外】第123話 カブケンMarket Memo file:20 26年10月15日号 『コアウィーブ×米CPIショック』

【号外】カブケン Market MEMO(2026年10月15日)芦田×三浦×黒田×蓮 緊急作戦会議

芦田:緊急招集してごめんなさい。今日は号外を出す必要があると判断したわ。まず数字から。日経平均は前日比3,318円安の64,425円で引けた。6営業日続落、節目の65,000円も64,000円もあっさり割り込んだ。前場は安値引けで終え、後場も戻りきれずその水準のまま大引け。

三浦:韓国はもっと激しいです。KOSPIが一時7.97%安の5,529.65、KOSDAQとともにサーキットブレーカーが発動して20分間取引停止。年初来10回目の発動です。SKハイニックスが11%超、サムスン電子も9〜10%下落。KOSPIは7営業日連続安で、この間の下落率は約21%。2024年9月以来の長さです。TOPIXも4,000ポイントを割り込んで3,993.50。

黒田:引き金は米9月CPIだな。前年比+3.7%と市場予想を上回って、FRBの追加利上げ観測が再燃した。SOX指数は前日に-4.30%。これだけなら「セオリー通り」の金利ショックだが、今回はもう一つ材料が重なっている。

芦田:コアウィーブ・ショックね。米AIクラウド企業コアウィーブの社債が急落して、表面利率9.625%の銘柄の流通利回りが一時15%台まで跳ね上がった。AIデータセンター投資は巨額の社債発行で賄われている構造だから、この利回り急騰は「AI投資の資金調達コストが急に上がった」という意味を持つ。金利上昇という外側の圧力に加えて、AI業界の資金繰りそのものへの懸念という内側の火種が同時に点いた格好よ。

蓮:ここでちょっと整理させてください。今日のセクター別を見ると、上昇したのは医薬品、パルプ・紙、小売、不動産、食料品。下落したのは非鉄金属、電気機器、ガラス・土石。これ、見事にAI・半導体と内需・ディフェンシブで真っ二つに分かれてますよね。値上がり寄与トップが良品計画で約31円押し上げ、上場来高値をつけている一方、値下がり寄与トップのアドバンテストは一時13.9%安。同じ東証プライムの中で、ここまで明暗がくっきり分かれるのは異常だと思います。

三浦:その通り。前引け時点の騰落数は値上がり509、値下がり1,007。約3分の2が下落している一方で、ディフェンシブには明確な資金逃避先としての買いが入っている。これは「全面安のパニック」ではなく「AIというテーマからの選択的な資金撤退」と見るべきです。

黒田:ただ、ここで一つ疑問を挟みたい。これは本当に「正しい」値動きなのか。蓮、ここ2週間の日経平均の値動きを並べてみてくれ。

蓮:はい。10月1日はマイクロンの好決算で+2,203円。6日は米ハイテク株高を引き継いで+737円、7万円台を回復。13日は半導体に売りが集中して-1,253円。14日はASMLの決算をきっかけに一時反落したものの終値はほぼ横ばい。そして今日が-3,318円。この2週間だけで、2,000円を超える上げ下げが3回も起きています。

芦田:つまり「過剰な上げ」と「過剰な下げ」を交互に繰り返している。これは個別企業のファンダメンタルズが日替わりで変わっているわけではなく、値がさのAI・半導体株に資金が集中しすぎていて、ちょっとした材料で振れ幅が極端化しやすい地合いが続いている、ということね。

黒田:俺の見立てでは、今日の下げ幅そのものはやや過剰反応だ。ニッセイ基礎研究所のアナリストも13日の時点で「AI・半導体関連を中心に業績成長期待は高く、関連銘柄への先高観は衰えていない」と指摘している。CPIの上振れとコアウィーブの社債という材料は軽視できないが、一日で4.81%も下げるほどの新情報かと言われると疑問が残る。市場コメントでも「やや過剰反応」という声が出ている。

三浦:とはいえ、コアウィーブの件は「金利が上がった・下がった」という従来の材料とは質が違います。AI投資そのものの資金調達能力に疑問符がついた、という点は構造的な懸念として扱うべきで、簡単に「行き過ぎだから買い」と片付けるのは危険だと思います。

芦田:ここで作戦会議に入りましょう。今日の日本時間15時、台湾TSMCが決算を発表したわ。これが次の試金石ね。

三浦:数字自体は非常に強いです。売上高は前年同期比50.9%増の1兆4,942億台湾ドルで、会社予想の上限をも上回るペース。純利益は68.7%増の7,630億台湾ドルでアナリスト予想を上回りました。2026年の設備投資計画も最大640億ドルを維持しています。「AI投資が止まった」という懸念には、数字の上では明確に反論する内容です。

黒田:ところが、それでも発表後に半導体関連株は下げている。理由は粗利益率だ。今回の粗利率は66.4%で、4〜6月期実績の67.7%から低下している。2nmプロセスの量産立ち上がりと、海外工場の稼働コストが利益率を圧迫している。市場は「売上はいくら伸びても、利益率が削られるなら高いAI投資を吸収しきれていないのでは」と疑い始めている。

蓮:でも、これって今回初めて分かった悪材料なんですか?

三浦:いえ、そこが重要なポイントです。TSMC自身が7月の決算説明会の時点で「2nm量産の拡大が粗利率を3〜4ポイント押し下げる」とすでに説明していて、今回のガイダンスも会社予想のレンジ(65〜67%)の範囲内に収まっています。想定外の悪化ではなく、織り込み済みのはずの数字で売られている。

黒田:加えて、TSMCは決算発表直後に株価が下がるのがむしろ「お決まりのパターン」だ。好決算でも「過去最高益にもかかわらず下落」という反応は過去の四半期でも繰り返し起きている。市場参加者の間でも「決算直後は下がり、数日かけて戻る」という値動きのクセがよく知られている銘柄だ。

芦田:つまり、売上・利益というファンダメンタルズは市場予想を上回り、懸念されていた粗利率も会社自身のガイダンス内に収まっている。それでも発表直後に売られたのは、良い数字を確認してからの「材料出尽くし」の利益確定と、TSMC特有の値動きのクセが重なったものと見ていい。今日の日本株の急落に乗じて、さらに材料が悪化したわけではないということね。

黒田:俺の提案は3つだ。1つ目、今日のような日に新規でAI・半導体株を買い向かうのは禁止。下げ止まりを確認するまで待つ。2つ目、ディフェンシブへの資金逃避が続くかどうかを明日以降もウォッチする。資金が戻ってくるかどうかが、今日の下げが一過性か構造的かを判断する材料になる。3つ目、TSMCの決算を受けた半導体株の下落も、織り込み済みの粗利率低下への「出尽くし売り」である可能性が高いという前提で、明日以降の戻りの有無を確認する。

三浦:私からも一つ。韓国のサーキットブレーカー発動は、今年すでに10回目という点を重く見るべきです。頻発しているということは、それだけ市場構造自体が値がさハイテク株への資金集中とレバレッジに脆弱になっている証拠。今日一日の値動きだけでなく、この「頻発する極端な値動き」自体を一つのリスクシグナルとして記録しておきましょう。

蓮:僕からも提案です。次回以降、こうした「過剰な上げ下げ」が起きるたびに、今日のような騰落セクターの分断と、直近2週間の値幅を必ずセットで振り返る習慣をつけませんか。パニックに巻き込まれず、何が本物の悪材料で何が過剰反応なのかを切り分ける訓練になると思います。

芦田:いいまとめね。今日の結論:下げ幅自体はやや過剰反応の可能性が高いが、コアウィーブの社債問題は軽視できない構造的懸念。一方でTSMCの決算は売上・利益ともに市場予想を上回り、懸念されていた粗利率低下も会社自身のガイダンス内に収まっていた。発表後に半導体株が下げたとしても、それは新しい悪材料というより「材料出尽くし」の一時的な調整である可能性が高い。ディフェンシブからの資金還流の有無を次の判断材料にして、今日はポジションを動かさず様子見に徹しましょう。

カブケン運用部・芦田薫、三浦結衣、黒田、蓮

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